2019年1月24日(木)、都立第三商業高等学校にて近未来ハイスクールを開催しました。

今回は「情報の伝え方」というテーマで、IT系情報サイト「Web担当者Forum」の編集長を務める四谷志穂さん(株式会社インプレス)と同サイトの前編集長の安田英久さんを迎え、ワークを中心とした授業を行いました。

2つのキャッチコピーはどう違う?

はじめに四谷さんは、ある歯磨き粉を紹介する2つのキャッチコピーを生徒に見せ、「どちらが欲しくなりますか?」と投げかけます。

1つは「あなたの歯を白く健康に保つ」というコピーで、もう一方は「息さわやかがずーっと続く」。それぞれ良いと思ったコピーに挙手をしてもらうと、大きな差はないものの前者に手を上げた生徒が多くいました。

A、Bのどちらかを選んだ理由についてある生徒からは「白い歯が良いからAを選んだ」と言い、またある生徒は「Bの“息さわやか”という言葉が良かった」という意見がありました。

続いてあるハンバーガーショップのコピーが2つ紹介されます。

1つは「朝メニューいつものコンビが300円」。そしてもう一つは「なぜ、マフィンは朝だけなのか?お店に行くと答えがわかる!」というコピーです。

四谷さんが「どちらほうがお店に行きたくなりますか?」と質問をすると、ほとんど生徒が“300円”という値段に惹かれ、前者に挙手をしました。

この結果に対して四谷さんは「この質問に正解はない」と言います。続けて「ではこれらの情報の違いは何でしょうか」と生徒に投げかけます。

目的・ゴールによって伝える情報が変わる

四谷さんによれば情報には、「情報を出す人」と「受け取る人」の関係があると言います。情報を出す人が受け取る人をイメージできているかどうかによって、情報の伝え方が異なります。たとえば、

  • 情報を受け取る人は誰か?
  • その人は、どんなニーズを持っているのか?
  • 情報を得て、その人にどうなって欲しいのか?

によって、情報は異なります。

先述の歯磨き粉のコピーの場合、“白い歯”や“健康な歯”を目指す人に向けた情報と、口臭が気になる人への情報は異なるのです。

ハンバーガーショップの例では、朝メニューの安さを知ってもらいたいのか、それともお店に来てもらいたいのかという目的によって表現が大きく異なっています。

「情報の受け手が『誰で・どんなニーズを持って・どうなって欲しいか[四谷1] によって表現が変わるのです」と改めて強調すると「今日の授業で覚えてほしいのはこれだけです」と四谷さんは言い切ります。これに対して生徒は少し困惑した様子。

しかしもちろんこれで授業が終わるわけではありません。次に四谷さんはあるワークを始めます。

“思考のフレームワーク”を利用し伝える情報を明確に

突然、富士山の写真を見せると「富士山のPR大使になって、富士山の魅力を伝えてください」とだけ伝えます。

制限時間を設けて一人ひとり考える時間が始まりますが、生徒の手はなかなか動かない様子です。

あっという間に制限時間が過ぎると「みなさん悩んでしまいますよね」と四谷さん。

それもそのはず。「富士山の魅力を伝えてください」とだけ言われても、「誰に」・「どんなニーズに」・「どうしてほしいか」といった観点が抜け落ちているため、魅力を伝えようにもどうすれば良いか分からないのです。

ここで、四谷さんは「誰に」という点を「海外から来る観光客」に、「どうしてほしいか」という点を「富士山さんに登ってもらいたい」というお題に設定しなおし、改めて富士山の魅力を考えてもらいます。

そして「誰に」・「目的」・「情報の受け手のニーズ」・「富士山の魅了」という情報を整理する資料を配布。四谷さんは「このような思考のフレームワークを利用することで、伝えたいことを明確にできる」と言います。

生徒は「どんな情報があると登りたいと思うか」というヒントが与えられると、先程よりも手が動くようになり話し合いが盛り上がってきます。

「富士山はSNS映えする」と考える生徒には「どんな写真をアップすると、富士山に海外からの観光客が来てみたいと思う?」と問いかけたり、富士山の高さを伝えたいという生徒には「“高い”という表現をどう言い換ると富士山に行きたくなる?」と投げかけたりしながら、四谷さんは生徒をサポートします。

生徒同士の相談では「それは富士山じゃなくても言えることだね」と話しながら、富士山ならではの魅力を探る生徒も見られました。生徒は「同時に静岡県と山梨県のどちらにも行ける」といった点に気づいたり、「高い」という表現を「日本で一番空に近い」という言葉の変換をしたりして富士山の魅了を伝えようと試行錯誤を繰り返していました。

「伝わる情報」に必要なのは共感

先程よりも盛り上がった状態で制限時間が過ぎると四谷さんは「より伝わる情報を考えることは相手のことを考えること、つまり共感することでもある」と話し、さらに「今日のワークは実生活でも役に立つ」と語ります。

四谷さんが学生だったころ、働いていたアルバイト先では多くの従業員が自身の都合を優先していたため、アルバイト先の店長はシフト作りや人員配置などで頭を抱えていました。そんな中「いつもお疲れ様です。シフトを組むのも大変だと思いますから私はどこでも良いですよ」と四谷さんが店長に伝えると、忙しい時間帯でも比較的大変ではないポジションになったり、なぜか店長が四谷さんに優しくしてくれたりといったことがあったそうです。

自身の経験を踏まえながら「相手に共感し相手が望む言葉を考えることは、より伝わる情報のためだけでなく良い人間関係を築くことにもつながる」と強調し、四谷さんは講義を終えました。

最後に安田さんは、「“情報の伝え方”を考えるとき、“何を言うか”で悩むかも知れない。しかしそれよりも“相手は何に困っているか・どうなったら幸せか”ということを考えることが大事」と生徒にメッセージを送りました。

講義を終えた生徒へのアンケートでは、授業で作っているWebページに応用したいという声が多く見られました。「ターゲットは誰なのか考えながら作る」といった声や「もっと情報を集めて商品の魅力を伝えたい」といった声などがあり、それぞれのWebページを改善する気付きを得たようです。また「普段の会話でも共感を意識したい」、「大学や仕事でのプレゼンテーションなどにも役に立てたい」と振り返る生徒のように、今回の授業で学んだことを日常生活から大学進学後、就職後まで活かしたいという声も多数ありました。

Webサイトを作る技術だけでなく、情報の受け手を考えながらサイトを作ることも重要。これからの時代を担う生徒たちが、どのように情報と関わりながら未来を創っていくのかとても楽しみです。